はじまり/おわり/はじまり
またやってきてしまった
仕事が終わって急いでロッカーで着替える
アイホンの画面をチェックしてすぐに彼氏に連絡を取る
会ったのは夜の8時、梅田のロフト前でいつものようにコンビニでお酒をゲットした
付き合う前に一緒にたこやきを食べた場所で別れ話になった
当然涙がお互いに止まらない
わたしは涙を流しながら顔が動かせなかった
彼氏のだいすきな大きい目から涙が流れていたから
彼と散歩をしながら次のコンビニでまたお酒をゲットして壊れかけのフェンスに座って話す
思い出を思って楽しくなったりかなしくなったりして笑ったり泣いたりを繰り返した
肉まんが100円セールだったので買って何口かもらった
おいしいところだけわたしにくれた
そういうひとだったなと思うとまた涙が溢れてきた
お互い好きなのに別れるなんて馬鹿だと思っていた
でもどうしようもないことだってあるんだ
どうしようもないことだって乗り越えたかったけれどこれは乗り越えたってことなのかな
これでよかったんだって、もしかしたらまた人生が交わるかもしれないって彼が言うから不思議とそういう気持ちになった
わたしは思わずビフォア三部作の話をした
列車で出会ったふたりが同じ街で降りて夜が明けるまで散歩をして朝が来てお別れの時にまた会おうと約束するよって
じゃあわたしたちは5年後の8月24日にまたここで会おうかと言って歩いた
わたしが川上未映子の作品の中でいちばん好きな短編「日曜日はどこへ」ではふたりは再会しない
そのことを話そうかと思ったのだけれど、また再会したかったからその話はせずにおいた
居酒屋に入って飲んで帰ろうかということになって、わたしの前に行ったことがあった居酒屋に行った
普段ふたりでは行かなかったような居酒屋だったのでなんかすごく特別な気分がした
お金がないのに彼はいつもどこか食べに行く?って訊いてくれたなあと思い出して泣けてきた
わたしはお腹は空いていないと言ってできるだけ路上飲酒をした
話は変わって、なにかをすることだけが人生じゃないんだって彼が言ったので、彼がそういう風に思うなんて意外だと思った
わたしはだれかと付き合ったり別れたりを繰り返すたびにわたしはまたやってしまったと虚しい気持ちに襲われるのだけれど、まあわたしの人生はそのなかのいろんな思い出の積み重ねで、生かされてるのかもしれないとなんとなく思った
すごくいい日々だった
でもわたしは馬鹿だからまた彼氏ができるかもしれない
でもね、この、あの、その、ひとつひとつをわたしは忘れないで生きていくんだと思う
もういいや
恋してあとはセーヌに身投げするだけ!